染井為人『正体』をほぼネタバレなしで紹介と感想です。
2022年に亀梨和也さん主演でドラマ化、2024年には横浜流星さん主演で映画され、話題沸騰中のサスペンス小説です。
一家殺人の罪で拘束中の、とある青年が脱獄するところから物語は始まります。
顔を変えながらも逃亡を続ける青年の目的とは…
あらすじ
埼玉で二歳の子を含む一家三人を惨殺し、死刑判決を受けている少年死刑囚が脱獄した! 東京オリンピック施設の工事現場、スキー場の旅館の住み込みバイト、新興宗教の説教会、人手不足に喘ぐグループホーム……。様々な場所で潜伏生活を送りながら捜査の手を逃れ、必死に逃亡を続ける彼の目的は? その逃避行の日々とは? 映像化で話題沸騰の注目作!
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注目ポイント
鏑木慶一の目的
一家3人を惨殺したとされる鏑木慶一は、ある目的を持って逃亡を続けているようです。
職を変え、住む場所を変え、姿を変えながら鏑木慶一は逃亡を続けます。
一体何の目的があって逃亡を続けるのか?
彼が探そうとしている人物の正体は…?
鏑木慶一と関わった人間たち
鏑木慶一と関わった人間は口を揃えてこう言います。
「彼がそんなことをするとは思えない」
鏑木と親密にしていた彼らは、鏑木が犯したとされる罪を信じていません。
彼らが訴える鏑木慶一の姿と殺人を犯したとされる鏑木慶一、一体どちらが本当の姿なのでしょうか。
日本社会が抱える闇
本作では、労働環境や介護現場、宗教トラブルなど、日本社会が抱える闇について触れています。
鏑木慶一はこれら社会の闇に触れていく中で何を思ったのでしょうか。
そして、その時取った鏑木の行動とは…?
感想
面白すぎた一冊です。
500ページを超える大作ですが、読むのには苦労しないほど、文章がスルスルと入ってくる読みやすさです。
文章もスッキリとしており、登場人物たちの心情がわかりやすく描かれており、感情移入もしやすいと思いました。
最初は鏑木慶一の逃亡の鮮やかさにばかり夢中になっていましたが、次第に鏑木慶一に隠された背景に興味が移っていきました。
鏑木慶一は一体何の目的で逃亡を続けるのか?
髭を生やし、髪型を変え、果ては整形まで行いながらも逃げ続ける鏑木。
そこまでして逃げ続ける理由が衝撃的過ぎました。
自分だったらここまではできない。
シンプルにそう思いました。
絶対に途中で諦めている。
何なら警察に確保された時点で諦めている。
作中に面白半分で登場する「鏑木慶一君を応援する会」のようなものがありますが、読了後の僕は紛れもなく鏑木慶一の逃亡を応援する1人です。
彼にだけは幸せになってもらいたい。
そう思わずにはいられませんでした。