今回は、田内学『きみのお金は誰のため』をご紹介します。
【読者が選ぶビジネス書グランプリ2024】の総合グランプリにて見事第1位を受賞した本作ですが、はっきり言って神本です。
経済のことをこれだけわかりやすく説明してくれている本はないと思います。また、小説形式なのも読みやすくてグッドポイントです。
この本を読んで、僕は今まで「お金の奴隷」でしかなかったんだと思いました。
今この記事を読んでいるあなたもきっと同じです。
僕たちは知らず知らずのうちにお金の奴隷になってしまっています。
本書はあくまで、「お金」の正体や僕たちが生きている資本主義の世界における考え方を教えてくれる本であり、お金を稼ぐ方法を教えてくれるものではありません。
しかし、この「お金の正体」を知っておくことで、あなたの考え方や行動は大きく違ったものになってくるはずです。
本書は、お金について悩んでいる人、お金を稼ぎたい人にピッタリな内容となっています。
なぜ、お金の稼ぎ方を教えてくれる本ではないのに、お金を稼ぎたい人にピッタリなのかは、あなた自身の目で確かめください。
概要
◆所得、投資、貯金だけじゃない、人生も社会も豊かにするお金の授業、開講!◆
今さら聞けない現代の「お金の不安や疑問」を物語で楽しく解説!
・日本は借金まみれでつぶれるの?
・少子化でもやっていける方法って?
・物価が上がるのと下がるの、結局どっちがいい?
・どうして格差が広がるの?
・貯金をしても老後資金の問題は解決できない
・貿易赤字が「本当にヤバい」理由は?
「お金の本質」がわかると、人生の選択肢が増える! お金の不安がなくなる!「え、そうなの?」が「そうだったのか!」に!6つの謎で世界の見え方が変わる!
・お金の謎1:お金自体には価値がない
・お金の謎2:お金で解決できる問題はない
・お金の謎3:みんなでお金を貯めても意味がない
・格差の謎:退治する悪党は存在しない
・社会の謎:未来には贈与しかできない
・最後の謎:僕たちはひとりじゃない
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登場人物
佐久間優斗
中学2年生の男の子。実家はトンカツ屋。大学受験を控えた兄がいる。
ひょんなことから七海とともにボスからお金に関する講義を受けることになる。
久能七海
ボスの下でお金に関するリテラシーを高めるためにやってきたエリート会社員。
経済に関する知識は高いようだが…
ボス
塀に囲まれた大きな屋敷で暮らしている謎の人物。
優斗と七海にお金のことについて教えてくれる。
これだけは覚えておきたいポイント
人の悩みを解決した者がお金を受け取れる
僕たち大人の多くは、どこかの会社に所属し、そこで労働力を提供する代わりに報酬として給料をもらっています。
僕たちが一般的に考える労働とはこのようなことを指すわけですが、その本質を理解できている人は多くないのではと感じています。
僕たちは、働いたからお金をもらえるのではなく、人の悩みを解決したから自分のところにお金が流れ込んできている。
このような考え方をあなたはしたことがあるでしょうか?
概ね、僕たちがそれぞれ所属する会社は、どこかの誰かの悩みを解決できるような商品やサービスを世の中に提供しているはずです。
抱えている悩みを解決するために、消費者はお金を支払ってその商品やサービスを購入しているということです。
これだけであれば、お金は会社の中に入ってくるだけで止まってしまいます。
つまりは、収入は経営者のものというわけですね。
しかしそれは、経営者や社長が1人で事業を運営している時の話。
例えば事業が勢いに乗って仕事量が莫大に増えてしまったとき、1人では到底すべての業務を行うことは難しくなってくると思います。
そんな悩みを抱えた社長は、自分の悩みを解決するために社員を雇います。雇われた社員は、社長の代わりに業務に臨むことで社長の悩みを解決します。その結果、社長は悩みを解決してくれた社員にお金を支払っているというわけです。
これがまずお金を稼ぐ上で知っておくべきことです。
働けばお金が入ってくるのではなく、人の悩みを解決した分だけお金が流れ込んでくるのです。
つまりお金を稼いでいる人は、より多くの人の悩みを解決するために行動したということになります。
内側と外側でお金を考える
2024年現在、日本の国民数は約1億2000万人といったところでしょうか。
先ほど、人の悩みを解決した人のところにお金が流れ込んでくるという話をしました。
日本の会社が日本に所在している人に商品やサービスを売ったところで、そのお金は国内の誰かから誰かに移動しているだけになります。
つまり、日本円の総量自体は増えておらず、お金が人から人へ移動しているだけになるのです。
日本政府がとても大きな借金を抱えていることは、多くの人が知っていることかと思います。その額およそ1200兆円と言われています。言われたところでピンとこない金額ではありますが。一人当たりに直すと1000万円程度の借金があるということになります。
ここでよく叫ばれることは、「昔の借金を現役世代がなぜ返さなくてはならないのか」ということ。
本書で挙げられている例は非常にわかりやすく、家庭の借金と国の借金で比較しながら説明されています。
家庭の借金の場合は、家庭の外側の人にお金を払って働いてもらっており、国の借金の場合は、国の内側(国内)にいる人が働いているということ。つまり、国の借金を受けて働いているのは自分たちであるということ。
ピンときた人もいるでしょうか。
国は1200兆円もの借金を抱えていますが、実はその借金は日本国内の会社や個人のもとに流れ込んでいるという話です。
現在銀行に預けられている金額は、1400兆円相当と言われているそうです。
つまり、日本が借金をしてところで、国内の会社に仕事を依頼しているのであれば、その借金は国内の中で循環されていくということです。
国内でお金が循環しているのか、海外へとお金が流れ続けているのかによって状況は全く違ってきます。
現在日本政府が抱えている借金をただ単に自分たちの負担と捉えるのではなく、借金によって国民の生活が守られている、という視点を持つことで僕たちはお金の使い方や働き方を変えていくことができるのではないでしょうか。
世界は贈与でできている
あなたは、「贈与」という言葉に対してどのようなイメージを持っているでしょうか?
プレゼントや贈り物、人からもらうものといったイメージを持っている方がほとんどだと思います。
ボスが言うには、「贈与」が世界を作るというのです。
贈与とは、何かを提供する代わりに見返りを求めるものではなく、贈与を受けた人が未来に向けて何かしようと思う行動のことです。これが次の贈与へとどんどんつながっていくことで、未来が作られていきます。
自分から他人、他人から自分への贈与であり、過去から現在、現在から未来へと続いていくのです。皆で、贈与という形で支え合って未来を作り続けているのが僕たちがいる世界です。
そして、それらを補うために存在するのがお金であるとボスは語ります。
僕たちはお金のために他人とやり取りをしているのではなく、何かを贈与するためにがんばり、目に見える形としてお金を使っているに過ぎなかったのです。
心から人を愛すること
最後にボスはこう伝えています。
僕たちが未来を作り続けていくためにはどうするべきなのか?
ひとつは、「目的を共有すること」です。
災害などで被災地を助けようとする行動がまさにそれです。平穏な日常を取り戻すため、その未来を共有し、僕たちは支え合っていくことができます。
もう一つ大事なことは、「心から人を愛すること」です。
他者を愛することを知ると、相手がどのような気持ちを抱いているのかを考えることができるようになります。
そして、自分と他者とでは見え方が違うということに気づくことができるようになります。
最重要なことは、愛する人を守ろうと思うと、社会そのものが人ごとではないように感じてくるのです。自分の大切な人を守り続けていくためには、社会自体が良いものでなければ、難しいものです。
こうして、大切な人を守るために社会を良くしていこうとする動きが増えることで、お金の流れ自体も良くなってきます。
僕たちは、大切な人を守ろうとしているものの、結局は自分のことしか考えることができていないのかもしれません。
感想
お世辞抜きで神本です。
この本以上にわかりやすく経済について説明された本はないと思います。
数字の話などはほとんど出てこないので、数字に苦手意識を持つ方でもしっかり理解できる内容になっています。
また、小説仕立てなのも読みやすさを助長させているポイントです。
経済に関する話は、小難しい話も多く、敬遠しがちな人が多いのも分かる話。
本書では、小説仕立てにした上で、数字などを取っ払って「経済」の本質に迫る話を掘り下げていきます。
本書を読み進めていくことで、僕たちがいかにお金に振り回されている「お金の奴隷」であるかを実感させられます。
お金を稼ぎたいと思っている人、稼ぐことには興味はないけど自分たちが困らないぐらいの生活はしたいと思っている方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
この本を読んでいないあなたは、「お金の奴隷」でしかありません。
お金に振り回されるのではなく、お金の正体を知り、経済の本質を掴むことで、僕たちはみんなでもっと豊かな生活を送ることができるようになるはずです。
本書を読み、ぜひあなたらしい生活を手に入れてみてください!