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『何者』就活を通して描かれる、何者かになりたいのに何者にもなれない若者たちの苦悩を描いた傑作

朝井リョウ『何者』の感想です。

著者は、『桐島、部活やめるってよ』『正欲』などを代表作に持つ朝井リョウ先生です。

本作は2016年に、佐藤健、有村架純、菅田将暉、二階堂ふみ、岡田将生、山田孝之らによって映画化もされた作品です。

就活という舞台をメインに、若者たちの苦悩を描いた作品です。

就活で悩んでいる方は心を壊してしまうかもしれないのでオススメしません。

目次

あらすじ

想像力が足りない人ほど、他人に想像力を求める。

就活対策のため、拓人は同居人の光太郎や留学帰りの瑞月、理香らと集まるようになるが――。衝撃のラストが襲いかかる戦後最年少の直木賞受賞作。

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

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個人的に興味深かったポイント

就活という舞台

個人的に就活にいい思い出はありません。

すぐに緊張し、練習したとおりに喋れた試しがないので。

本作を読んでいて感じたのは、就活ってこんな感じだったよなっていうこと。

みんなで一斉に横並びで就職に向けて活動を始め、蹴落とし合っていく舞台。

定型文すら言えない者は即座に脱落し、グループディスカッションを乱す者は就活生・面接官双方から白い目で見られ、そこそこ要領の良い者から勝ち上がっていくというのが就活の場です。

本作で繰り広げられるのは、そんな就活の場で醜くもがく若者たちの苦悩です。

何者かになりたい若者

彼らは何者かになろうと必死にもがいています。

何者かになるために、学園祭の運営をやってみたり、海外ボランティアに行ってみたり、名刺を作ってみたり。

個の時代であることを謳い、フリーランスのマネごとをするような学生もいたり、観察者を気取る者もいます。

そして、自分が何者にもなれないのを親のせいにするものもいます。

何者かになりたいけれど、何者にもなることができないという現実を突きつけられているのです。

またそれは、何もせずにおいしい水をすすろうとしているだけでもある。

大学生に与えられた時間はおよそ4年程度。

僕たちは人生100年と言われる現代社会において、たった4年で何者かになろうとしている浅ましい存在なのかもしれません。

人間としての気持ち悪さ

何者かになりたいのになれない人間というのは、特有の気持ち悪さを放っているものです。

特に大学生の時にそれを成そうとしている人たちは、限られた時間のカウントダウンに焦っています。

そうすると、人間の本来奥深くに眠っているであろう、非常に醜悪な部分が表れ、他人を攻撃したり、見下し始めるのです。

本作で見ることができるのは、そんな醜い人間たちの足の引っ張り合いです。

感想

本作は、何者かになろうとする大学生たちを描いた小説です。

誰しもが人生で一度は、何者かになろうと、もがき苦しんだ経験があるのではないでしょうか?

かくいう僕も、学生時代にそのような苦しみを経験しましたし、なんなら現在も何者にもなれないでいる自分に苦しんでいます。

やれる限りのことをやって、学生らしい大層な肩書を身に着け、その経験を面接やグループディスカッションの場でアピールすることに終始してしまう者。

これからは個の時代と謳い、就職活動に躍起になっている者を見下しながらも陰ではいそいそと就活する者。

親を言い訳にして自分の行動・結果はあたかも仕方がないことのように言う者。

観察者を気取り、実力の伴っていない分析力で悦に浸る者。

実に様々な学生が登場する中で、僕の胸にも刺さるものがありました。

それは、観察者を気取って大層な分析をひけらかす拓人の存在です。

彼に対する指摘は、まるで自分に向けて発せられているかのように感じ、胸が締め付けられました。

実力もないのに観察者を気取る痛いやつ。

それはまさしく今の職場における僕の立ち位置を表したかのようでした。

ぬるりと自分の中に入ってくる朝井先生の文章が、より一層自分の惨めさを露呈させるかのように感じました。

映画も見ましたが、映画よりも断然小説版を読むことをオススメします。

映画版では、それぞれの登場人物における気持ち悪さが全く演出されていないためです。

『何者』の魅力的なところは、なんとも言えぬ、特に就活の場において見られる人間の気持ち悪い部分を文章で表現しているところ。

というよりも、文章でしかこの気持ち悪さは表現できないのだと思う。

就活の気持ち悪さ、人間そのものに備わっている気持ち悪さなどを巧みに表現した傑作だと思います。

気分を害される方もいるかもしれませんが、読んでみることをオススメします。

そのうち続編の『何様』も読んでみたい。

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この記事を書いた人

大学院にて病院経営を専攻、修士課程修了。
読書と勉強のために時間を欲するサラリーマン。
年間読書量は100冊ほど。読んだ本の中からオススメを紹介しています。
読書に役立つ時短術やサービスなども紹介しています。

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