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人間の悪意ここに極まれり!呪物ひしめき合う旧家の結末は…『さかさ星』

貴志祐介『さかさ星』の紹介・ガチレビューです。

ネタバレは若干含みますのでご注意を。

満を持して登場した貴志先生の最新作です。

黒い家』や『悪の教典』に続く「人の悪意」が引き起こす最恐ホラーとなっています。

ホラー好きや貴志先生の作品が好きな方は本記事をぜひ読んでいってください。

目次

あらすじ

数百年続く、凄惨なる呪いの戦い――。至高の恐怖と異形の謎に挑め。

戦国時代から続く名家・福森家の屋敷で起きた一家惨殺事件。死体はいずれも人間離れした凄惨な手口で破壊されており、屋敷には何かの儀式を行ったかのような痕跡が残されていた。福森家と親戚関係の中村亮太は、ある理由から霊能者の賀茂禮子と共に屋敷を訪れ、事件の調査を行うことになる。賀茂によれば、福森家が収集した名宝・名品の数々が実は恐るべき呪物であり、そのいずれか一つが事件を引き起こしたという。賀茂の話を信じきれない亮太だったが、呪物が巻き起こす超常的な事象を目にしたことで危機を感じ始める。さらに一家の生き残りの子供たちにも呪いの魔の手が……。一家を襲った真の呪物は? そして誰が何のために呪物を仕掛けたのか? 数百年続く「呪い」の恐怖を描く特級長編ホラー。

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著:貴志 祐介
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注目ポイント

福森家の因縁

福森家とは、初代当主・福森弾正から始まった、地方の旧家です。

その始まりは戦国時代といわれ、武家に仕えていたところ、ある事件をきっかけに台頭することとなった一族です。

その後も衰えるどころかますます成長を遂げ、現代においても地元での権力は並大抵のものではありません。

そのような福森家には、数々の因縁があるとされています。

成り上がりの一族である福森家では、その過程で悪逆非道ともいわれる行いをしてきています。

多くの人の恨みつらみをかっている福森家で起きた事件だからこそ、世間から注目されているのです。

福森家の許されざる行いを一つ挙げるとすれば、初代当主・福森弾正は、主君であった山崎崇春を不意打ちし殺害しています。

他にも多くの人の死に福森家は関わっており、どれだけの人から恨まれているのか想像もつかないほどとなっています。

霊能者・加茂禮子は何者?

この度の福森家の事件を解決するため現れたのは、霊能者・加茂禮子でした。

彼女は恐るべきほどの霊能力を持っているといわれ、その道の人物からは畏敬の念を抱かれているほどです。

しかし加茂禮子の助言を聞き、福森家の人間たちは不信感を抱きます。

先祖代々守ってきたこの家のありとあらゆるものに悪い気が見えるというのです。

宝と伝えられてきたものまで呪物だと言われてしまえばたまったものではないでしょう。

加茂禮子と福森家の人々は、途中まで協力し、迫り来る敵に対して協力できていましたが、あることを境に、関係が絶たれてしまいます。

加茂禮子は本当に信頼できる人間なのか、それとも・・・?

福森家に集められた呪物たちの正体

加茂禮子の見立てでは、福森家にあった縁起物とされるもののほとんどは呪物でした。

しかし呪物とひとえに言っても、悪いものばかりではないと言います。

人の強い思いがこもったものを総じて呪物と呼ぶらしいのです。

ただし、福森家にあるものはほぼ全て悪しき呪物でした。

選りすぐりの悪いものたちが集められ、犇合っていたからこそ、その混沌とした状況によって平常が保たれていたのです。

そのバランスを崩してしまった結果、今回の福森家の事件は起きてしまったのです。

そして、その呪物たちの成り立ちについては、どれも鳥肌が立つような代物ばかりで・・・

福森家を陥れようとする犯人の正体は・・・?

加茂禮子によると、今回の事件はたまたま起きたのではなく、誰かが悪意を持って実行したとのこと。

呪物たちもたまたま集まったのではなく、誰かが意図して福森家に集まるように仕向けてきたのです。

福森家の因縁を考えると、心当たりがありすぎて犯人が誰か分からない始末。

数百年前から続くこの因縁に、誰かが終止符を打つことになるのか・・・

感想

貴志祐介先生の最新作がついに登場しました。

約600ページもある大作で、非常に濃密なホラー作品でした。

『黒い家』や『悪の教典』に続く、「人の悪意」によるホラー作品となっており、ただオカルトな内容を流しているだけの作品とは怖さのレベルが段違いです。

立ち上がりが遅い節があるので、最初は退屈に感じていましたが、ページをめくるごとに面白さはどんどん加速していき、大興奮でした。

物語が複雑なため、少々とっつきにくいところはありますが、読んでいくうちに慣れてくるかと思います。

一つの作品の中でこれだけ多くの呪物を登場させ、それにまつわるエピソードもある程度の量考えてしまう貴志先生のすごさですね。

また、人の悪意というものが、犯人側だけのものではなかったのが今作の特徴かなと思います。

初代当主・福森弾正の悪意極まりない行動こそが諸悪の根源であり、今回の事件を引き起こしたものとも言えます。

何が福森弾正をそこまでの狂気に至らせたかはわかりません。

福森家にまつわる因縁はこれだけではないのかもと思わせるほどのものがありましたし、決着シーンを見るに、次回作も作られそうな終わり方でした。

というかさかさ星続編の構想があるらしい。

次回作が出るとしたらあの子達が主人公になるんでしょうか。

この作品で、僕が一番怖いと思ったのは、本当の本当に最後、エピローグでした。

あるシーンの伏線回収のような形だったのですが、そのシーンを頭の中で容易に想像できてしまい、本作のシーンの中で1番鳥肌が立ちました。

今思い出しても鳥肌が立つほどのシーンでした。

それにしても、日晨(にっしん)と月晨(げっしん)の正体とは…?

人の悪意を存分に感じてみたい方はぜひ読んでみてください。

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この記事を書いた人

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