染井為人『悪い夏』のネタバレ含む感想です。
あなたは生活保護についてどう思いますか?
働かずにお金がもらえるなら最高ですよね。
世の中には生活保護の不正受給という現実もあります。
もともとは弱者救済の素晴らしい制度ですが、不正受給による印象は相当悪いでしょう。
染井為人『悪い夏』では、生活保護の不正受給をテーマに物語が描かれます。
そしてそこに広がるのは、僕たち一般人が知りようもない恐ろしい世界でした。
あらすじ
ケースワーカーとして働く佐々木守は、うだつの上がらない日々を過ごしていた。
望んでいない部署に異動となり、無茶苦茶な人間たちを相手にする毎日に嫌気が差していた。
ある日、同僚が生活保護の打ち切りを盾に、ケースの女性に肉体関係を迫っていることを知る。
真相を知るために女性宅へと向かった守だったが、そこで見た現実は・・・
真実を知ってしまったが最後、もう普通の世界に戻ることはできない。
日本の現実を目の当たりにし、守は絶望に身を落とし始める・・・
キーポイント
生活保護の不正受給
本作のテーマは生活保護の不正受給です。
あからさまに受給要件を満たしていない人間たちを相手に守は立ち向かいます。
しかし不正受給の闇は深く、守が想像もしていなかったような現実が待ち受けています。
生活保護者に恐喝を繰り返す役所職員
本作ではあるケースワーカーが生活保護受給者に手を出します。
しかも恐喝し、お金まで巻き上げているというので末恐ろしい。
この事実を知った主人公と同僚は事実確認のために動き出します。
客には手を出すな
どこの業界・会社でもお客に手を出すのはご法度ですよね。
ある職員は一人のケースに手を出してしまいます。
それがいけないことと知って。
そして彼を待ち受けるのは想像もしていなかったような結末です。
※ネタバレあり感想
正直なところ、生活保護に対してはあまりいい印象がないですよね。
それはおそらく、ネットやニュースなどで不正受給の話がよく取り上げられているから。
働きもせず、国民の血税で贅沢な暮らしを堪能しているようにしか映っていないように思います。
本作では、そんな一部の人に焦点を当てたお話です。
読んでみて改めて思うのが、ケースワーカーさんは本当に大変だなと。
国からは不正受給を取りしまるよう厳しく言われ、申請者からはなぜ生活保護を受けられないのかと罵倒される。
それだけならまだしも、一般の人からの生活保護受給者に対する苦情の対応までしなけばならない始末。
その結果生まれたのが、生活保護不正受給者の恐喝という本作のお話です。
生活保護受給者を脅して手を出している高野という職員を、同僚である2人がそれを止めようとするというもの。
結局高野は悪事を奥さんにバラされ、離婚されてしまいます。
そしてまさかの、今度は主人公である佐々木が件の女性にハマってしまうという・・・
その女性からはなにか人を引き付けるようなフェロモンでも出ているのでしょうか・・・?
そして佐々木は破滅の道を歩み始めます。
というのもこの女性、裏でヤクザが手引きをしており、お金を巻き上げるために愛美(佐々木が惚れた女性)を利用していたのです。
そして結末はなんともまあ・・・
日々疲弊しながらも正しくあり続けてきたケースワーカーの佐々木の姿はそこにありませんでした。
救いの手はここに差し伸べられなかったようです。
物語の結末はあなたの目で確かめてみてください。
人生どこで転落していくか分かりませんね。
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