道尾秀介『球体の蛇』の感想を、若干ネタバレ含みながら紹介します。
夜な夜な人の家の床下に潜り込んでいる変態高校生のお話です。
ただの変態話と思うことなかれ。
主人公たちには仄暗い過去があり、ある人物との接近により物語
微ネタバレを含みますので、閲覧は自己責任でお願いします。
『球体の蛇』の特徴
- 高校3年生の主人公は夜な夜な人の家の床下に潜り込んでいる
- ある事件をきっかけに憧れの人物と急接近し、物語は予想もしていなかった方向へ
- 物語の結末はあなた次第…?
『球体の蛇』の要約
高校3年生の友彦は、幼馴染の家で3人暮らしをしていた。
幼馴染の父である、「乙太郎」はシロアリ駆除の自営業をしており、友彦は土日だけアルバイトとして手伝っていた。
友彦の役目は床下に潜り込んで、シロアリからの被害を乙太郎に報告することだった。
あるとき訪れた家で、重大なシロアリ被害が発見され、駆除依頼を受注することになった二人。
その家には、娘なのか愛人なのか、度々若い女性が出入りしており、友彦はその女性に夢中になっていた。
あるとき欲望を抑えきれなくなった友彦は、その家の床下に潜り込み、主人と女性との情事を盗み聞く。
理性のタガが外れた友彦は、頻繁に床下に潜り込むようになるが、あるときその家で火事が起こってしまう。
主人は亡くなり、友彦はあの女性が火をつけ殺害したものだと思っていたが、当の女性は友彦が火事を起こして殺害してくれたと思い込んでおり…
二人の急接近により、多くの人間の運命の歯車が狂い始める。
『球体の蛇』の感想
あらすじだけ見ると、特殊な性癖を持った少年の話にしか見えない。
実は少年は暗い過去を持っており、ある人物との出会いを経て驚愕の真実が明らかになる…というのが本作のお話。
読み進めるごとに暗さと重たさ、そして衝撃の事実が展開されていきますが、バランスが絶妙すぎた。
ただの暗い話で終わらず、読者の興味を惹きつけるような筆致で描かれているのはさすが道尾秀介さんといったところでしょうか。
主人公の友彦は、幼い頃に自分が発した言葉で、幼馴染を死に追いやってしまったと考えています。
一方、友彦がお世話になっている家の主人の乙太郎は、自身が子供だけを残して夜ドライブに行ってしまったことが、妻や娘を失った原因であると考えています。
複雑な思いを抱えながら、二人は乙太郎のもう一人の娘・ナオを含めた3人で暮らしている、少し変わった家族体。
友彦が高校3年生になるまで問題なく生活してきた3人ですが、白い帽子、白いワンピース、白い自転車に乗った女性・智子と出会ったことで、歯車が狂い始めます。
何がどうなっていくのか、予想がつきそうでつかない展開にワクワクしながら読み進めていけました。
僕は、道尾秀介さんの小説を読んだのは本作が初めてですが、一気にファンになってしまいました。
積読になっている『N』や『向日葵の咲かない夏』も、より一層楽しみになりました。
『球体の蛇』を読んだ人のレビュー
『球体の蛇』はどんな人におすすめ?
- ミステリが好きな人
- 結末を読者に委ねられるのが好きな人
- 床下に潜る性癖・願望がある人
『球体の蛇』:まとめ
本作は、過去に起こった火災に囚われ続けている二人が中心となるお話です。
ある人物の証言により、事件の真相が判明していきますが、結末は読者に委ねられているようにも感じます。
ミステリ要素も含む本作ですが、読むたびに捉え方の変わる面白い作品だと思います。
興味を持った方はぜひ読んでみてください。