湊かなえ『母性』の読了後感想です。
やはり湊かなえさんの文章はえげつない。
母親の手記と娘の回想をもとに進んでいくミステリーとなっており、真相に近づくに連れ、とても恐ろしい想像ができてしまいます。
作品をただのミステリーで終わらせないあたりが素晴らしい作品です。
この作品について詳しく知りたいと思った方はぜひご覧になってください。
あらすじ
女子高生が自宅の中庭で倒れているのが発見された。母親は言葉を詰まらせる。「愛能う限り、大切に育ててきた娘がこんなことになるなんて」。世間は騒ぐ。これは事故か、自殺か。……遡ること十一年前の台風の日、彼女たちを包んだ幸福は、突如奪い去られていた。母の手記と娘の回想が交錯し、浮かび上がる真相。これは事故か、それとも――。圧倒的に新しい、「母と娘」を巡る物語（ミステリー）。
Amazon.co,jp
注目ポイント
母の手記と娘の回想
母の手記と娘の回想が交互に描かれるため、双方の視点から読み進めていけます。
二人がそれぞれ何を思い、どのように考えて接していたのかがわかります。
ミステリーとして面白い装置にもなっていると思います。
「母性とは？」という問いかけ
あなたは母性についてどのように考えているでしょうか？
本作のテーマは「母性」であり、その本質について問われていると思います。
また、それと合わせて、「愛」とは一体何なのかも問われている気がします。
愛という言葉をやたら使いたがる人間は、本当に相手のことを愛しているのでしょうか？
「愛能う限り」
本作で幾度となく目にする言葉ですが、この言葉の意味するところは…
感想
湊かなえさんは親とこの関係をえげつなく書くのが非常にうまいなと思います。
『人間標本』では、父と息子の物語が描かれ、頭の狂ったとしか言いようのないサイコパスキラーには見事に騙されました。
本作では「母性」というものをテーマに描かれ、母と娘の関係を、それぞれ手記と回想という形で描いています。
娘を愛していたつもりの母と、母に愛されたかった娘の対比が美しく切ないです。
子離れができないという人がいる一方で、親離れができないという人も大勢います。
今作の母は、まさに親離れができず、娘が生まれてからも母からの愛情を誰よりも受けたかった人。
愛情の扱い方を間違えるるだけで人はこうも歪んでしまうというのかと恐ろしくなりました。
人の生死だけでなく、心情に深く潜り込んだミステリー作品は湊かなえさんの唯一無二と言っても過言ではない特徴であり、読者の心を深くえぐってきます。
そんな作品をついつい求めてしまい、湊かなえ作品なしでは生きることのできない哀れな読書ジャンキーになってしまいました。
湊かなえさんの作品が好きな方にはぜひ読んでいただきたい一冊となっていますので、興味を持った方はぜひお手にとってみてください！
