今回は、綾辻行人『Another』を紹介します。
『Another』とは、ホラーとミステリを絶妙なバランスで組み合わせた作品で、多くのファンがいる作品です。
数多くのメディア展開もされており、アニメ、マンガ、実写映画化など、その人気ぶりが伺えます。
2013年にはもう一つの物語『Another エピソードS』が、2020年には正統続編である『Another 2001』が刊行され、どちらもシリーズファンを唸らせる内容でした。
ただのホラーやミステリに飽きてきた人にぜひオススメの作品となっていますので、読みたい本を探している方は本記事で内容をチェックしてみてください!
あらすじ
夜見山北中学三年三組に転校してきた榊原恒一は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。同級生で不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、謎はいっそう深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木が凄惨な死を遂げた! この“世界”ではいったい何が起きているのか!? いまだかつてない恐怖と謎が読者を魅了する。名手・綾辻行人の新たな代表作となった長編本格ホラー。
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奇妙な「二人だけの孤独と自由」を過ごす中で、恒一と鳴、二人の距離は徐々に縮まっていく。第二図書室の司書・千曳の協力を得つつ、〈現象〉の謎を探りはじめるが、核心に迫ることができないままに残酷な“死”の連鎖はつづく……。夏休みに入ったある日、発見される一本の古いカセットテープ。そこに記録されていた恐ろしき事実とは!? ──ゼロ年代の掉尾を飾った長編本格ホラー、驚愕と感動の完結巻!
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登場人物
榊原恒一
東京からの転校生。夜見山市に滞在するのは3年生の1年間を予定している。見崎鳴と出会ったことで大きく運命が変わり出してしまう。
見崎鳴
左目に眼帯をしている謎の少女。その左目で通常見えないような不思議なものを見ることができるとか…
千曳
始まりの年の3年3組の担任を務めていた。現在は第2図書室の司書をしており、現象の「観測者」を名乗っている。
読み応えポイント
夜見北の「災厄」
夜見山市にある夜見山北中学校(以下、夜見北)のには不可思議な「現象」が起きます。
それは、夜見北の3年3組のみに起きる現象なのです。
「災厄」と呼ばれるそれは、4月になると分かります。
3年3組の中に席が1つ足りないという現象が起きます。事前の確認では、生徒の数はたしかに合っていたはず。なのに席が1つ足りないという事態が発生します。
これは、通称「いないもの」がクラスの中に紛れ込んだことが原因であると考えられています。
「いないもの」とは、昔夜見北の3年3組で起きた悲しい事件を発端としていると言われています。
生徒や教師からも愛されていた「ミサキ」という生徒が不慮の事故で亡くなり、それを受け入れることができなかったために、その後の夜見北3年3組では4月になると「いないもの」がクラスの中に紛れ込むという現象が発生するのです。
そしてこの現象が確認されると、「災厄」と言われる異様な事態が始まります。
「災厄」とは、通常ありえないような事態に巻き込まれて死に至る(もしくはそれに近い状態になる)ことを指します。
そして、3年3組の誰かが毎月1人以上この「災厄」に巻き込まれて死んでしまうのです。
ひたすらに理不尽な、自然災害のような超常現象を前に主人公たちは、災厄を防ぐために立ち向かっていきます。
少々行き過ぎたスプラッタな表現
夜見北の3年3組関係者に起こる「厄災」はとても常識では考えられないような死に方をします。
ただの体調不良かと思いきやだんんだん悪化する、階段からの転落などが死に繋がります。
これらは、ここではとても表現できるようなものではありません。
ただただ凄惨で惨たらしい死に方です。
苦手な方は受けつけないような描写もあると思います。
しかし、それだけリアルに恐怖を描いている作品であるとも言えるので、多少のスプラッタ耐性がある方は読んでみてもいいかもしれません。
ホラーとミステリの絶妙な融合
この作品のベースにあるのはホラーです。ミステリではありません。ミステリは、本作を絶妙な味付けで調理してくれている最高のスパイスです。
ホラーとミステリ、一見相性の良いジャンルに見えますが、その匙加減は非常に難しいのではないかと思います。
どうしてもどちらかの要素が強くなりすぎてしまい、どこか物足りない作品になってしまう。多くのホラー作品・ミステリ作品を読んできて、僕が感じているものです。
本作『Another』では、そのような心配は必要ありません。著者の綾辻行人先生は、ミステリも書くし、ホラーも書くという両刀の持ち主です。どちらのジャンルも手掛けてきているからこそ、その塩梅も熟知されているのだと思います。
ホラーの怖さを存分に魅せながら、ミステリのワクワク感を最大限まで高めています。
普通のミステリや普通のホラーに飽き飽きしてきた人にとってはたまらないスリルを味わうことができるのではないでしょうか?
メディア展開
「小説は時間がないから読めない…」「絵がある方がストーリーを楽しみやすい」という方はぜひアニメやマンガなどで作品に触れてみてください。
『Another』はアニメやマンガなど幅広くメディア展開されていますので、文章が苦手な方でも楽しめると思います。(逆にスプラッタなシーンがグロすぎ注意かもしれません。)
感想
ホラー好きに良し、ミステリ好きにも良しの最恐ホラー作品でした。
ホラーとミステリの融合感はさすが綾辻行人先生といったところです。めちゃくちゃ怖いし読み進めるごとにドキドキとワクワクが止まらなくなっていく作品はなかなかないと思います。
この夜見山市を取り巻く、暗く恐ろしい雰囲気というのは、僕が当事者であったら今すぐにでも逃げ出したいものです。主人公の榊原恒一や見崎鳴は最後までこの不可思議な現象に立ち向かっていきます。
この作品の結末はとてもつらく悲しいものです。しかし、この作品はただ恐ろしい模様を描いているだけではありません。
中学3年生という多感な時期の少年少女の姿を描き、彼ら彼女らが苦悩や喜びを通じて成長していく姿は、とても爽やかな青春群像劇とも言えます。
まだ中学生と侮ることなかれ、彼らは確実に成長し、自分たちの意志で様々な決断をしていきます。その中には、物語を左右するような、大きくてとても勇気の必要な決断もあります。
忘れた頃にまた読み返したくなるほど面白い作品ですので、ぜひお手にとってみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
本記事では、綾辻行人『Another』について紹介しました。
ホラーとミステリが絶妙に融合され、他の作品では見ることのできないような展開が待ち受けている作品になっています。ミステリ好きもホラー好きもぜひ読んでみてほしい作品です。
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