辻村深月『パッとしない子』の感想です。
あなたには好きなアイドルやタレントさんはいますか?
誰もが知る国民的なアイドルの過去がパッとしない子だったらあなたはどう思うでしょうか?
小学生時代、パッとしなかったあの子が発した気持ちを尊重した図工の先生。
ある日撮影で母校訪問にやってきたアイドルはその教師のことを覚えていて・・・
アイドルから聞かされる驚愕の真実に、肌が粟立つこと間違いなしの短編作品です。
あらすじ
小学校では、およそ先生も生徒もごく短い期間で入れ替わっていく。先生からすれば、生徒の顔を覚えるのも大変だし、勤務経験が長くなれば、生徒の数は累積し、記憶にも濃淡の差が出てくる。優等生、すぐ懐く子、やんちゃな子、問題児、そして、印象の薄い子。そんな教師と生徒の関係をスリリングに描いた作品だ。
小学校の図工の教師、松尾美穂はその日を、ちょっと高揚した気分で迎えた。教え子で、人気絶頂の男性アイドルグループのメンバーになった高輪佑(たすく、25歳)がテレビ番組収録のため、母校を訪ねてくるのだ。10数年前、美穂が担任をしたのは、佑の3歳下の弟だが、授業をしたのは事実で、佑ファンの娘にも羨ましがられている。美穂の記憶にある佑は地味で、パッとしない子供だったし、プロはだしと称賛される絵の才能も、片鱗は見いだせなかった。撮影を終え、完璧な笑顔で現れた佑は、意外にも松尾に話したいことがあると切り出したが……。
作品のポイント
小学生時代はパッとしない子
国民的アイドルグループ「銘ze」のメンバーの1人である「高輪佑」はとある小学校の卒業生。
今でこそ大人気のスターだが、小学校時代は目立つ方ではない、パッとしないグループの子供だった模様。
国民的アイドルである上に、芸術的なセンスも持ち合わせており、その腕はプロ級とも言われるほど。
はたして彼は本当にパッとしない子だったのだろうか?
女教師の裏の顔
当時、高輪佑の弟の担任を務めていたのが松尾美穂(旧姓:佐藤美穂)だった。
彼女によると、佑やその弟の晴也はパッとしない子供だったらしい。
当時を知らない人たちは彼女の言葉を間に受けるしかなく、佑の変化ぶりに、相当な努力を感じ取っている様子。
そんなタスクが松尾美穂を見る目はどうにも怪しく、何か言いたげである。
撮影が終わると2人きりで話がしたいと言われ・・・
感想
50ページ弱しかない短編なので、非常に読みやすいです!
こんなに短いのに、急転直下なストーリーでドキッとさせられます。
恩師と生徒の感動の再会話かと思いきや、自分のことを「パッとしない子」だったと呼んでいる松尾のことを恨んでいる様子の佑。
彼の小学生時代に、彼女とどのような因縁があったのでしょうか?
言う側の意識と言われる側の意識の違いが絶妙で最高に面白い作品です。
まとめ
恩師との感動の再会・・・と思いきや、思わぬ方向へと物語が展開されていく作品です。
予想だにしていなかった展開、結末に驚かされます。
僕らが恩師として慕っている先生も実はこんななのかもしれません。
『パッとしない子』はKindle Unlimitedで読み放題となっています。
興味を持った方はぜひチェックしてみてください。