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プールの水をうっかり抜いてしまったことを隠し通せるか?心理戦が超面白いイヤミス『汚れた手をそこで拭かない』

芦沢央『汚れた手をそこで拭かない』の感想と紹介です。ネタバレなし。

イヤミス短編集となっている本作には、5編の短編が収録されています。

そのいずれもが後味の悪いような終わり方をします。

イヤミスと言えば湊かなえさんが有名ですが、芦沢央さんの作品もなかなか毒強めに仕上がっています。

「本を読む時間がないけどミステリーを読みたい!」

「もっと色んなイヤミスを読んでみたい」

という方々にオススメの1冊です。

本作が気になった方は下記の紹介もご覧ください。

目次

あらすじ

著:芦沢 央
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もうやめて……ミステリはここまで進化した!

第164回直木賞候補作。

ひたひたと忍び寄る恐怖。

ぬるりと変容する日常。

話題沸騰の「最恐」ミステリ、待望の文庫化。

閉鎖空間に監禁された

デスゲームの参加者のような切迫感。──彩瀬まる

平穏に夏休みを終えたい小学校教諭、元不倫相手を見返したい料理研究家……。きっかけはほんの些細な秘密だった。

保身や油断、猜疑心や傲慢。

内部から毒に蝕まれ、

気がつけば取返しのつかない場所に立ち尽くしている自分に気づく。

凶器のように研ぎ澄まされた“取扱い注意”の傑作短編集。

Amazon.co.jp

短編紹介

ただ、運が悪かっただけ

建具職人の彼の妻は、余命幾ばくかしかない。

彼はそれを知り、彼女のそばにいられるようにと仕事も調整してきた。

寡黙だが優しい一面のある夫だ。

妻の方は、そんな夫を一人残して先立つことを申し訳なく思い、ある日うなされる彼にこう提案した。

あなたが抱えているものを私に話してもらえれば、それをあの世へ一緒に持っていこう、と。

彼は妻の気遣いを嬉しく思い、話してみることにした。

彼は、昔の勤め先の自称・太客を死なせてしまったのだと話し始めた。

しかし、妻が聞いてみると、そこに彼の責任はないように感じられる。

もっと深堀りして話を聞いてみると、その太客にはほぼ絶縁状態の娘がおり、死亡したその日には娘が帰ってきていたという。

事件性はないように思われていたが、娘が帰ってきていたのは偶然なのか?それとも…

埋め合わせ

小学校で教師を務める彼は、ついうっかりしてしまった。

プールの水を半分ほど抜いてしまったのだ。

最近見かけたニュースによると、同じようなミスをした教員が自費で弁償したのだとか。

彼がざっくり計算したところによると、自身の弁償額は約13万円。

払えない額ではないが、やはりできるならば誰にもバレたくない。

そこで彼は、ある秘策を思いつき、早朝に実行しようとするがまさかの人物と遭遇し…

忘却

彼の妻は軽い認知症だった。

少し物忘れがある程度だが、これが思わぬ事件を引き起こしてしまった。

隣の部屋に住む高齢者が、孤独死していたのだ。

原因は、熱帯夜にも関わらず、エアコンを稼働させていなかったことが考えられているようだ。

なぜ彼らがこの事件に関わりがあるのか?

それは、彼らの部屋の郵便受けに、隣の部屋の人物の電気料金滞納の請求書が入っていたためである。

彼の妻に、隣の高齢者に請求書を渡すように頼んでいたのだが、例のごとく渡し忘れてしまったのだ。

ある日、自分たちの部屋の電化製品修理に業者を呼んだ際、とあることを聞いてみた。

すると、この部屋で起きていたとんでもない事実が判明する…!

お蔵入り

まだ無名の映画監督である彼は、今回の撮影に燃えていた。

実力ある主演俳優と想像以上に現場を牽引してくれたアイドルの力により、映画の成功を確信していた。

しかし、主演俳優が麻薬所持していることが発覚し、映画はお蔵入りになる危機に直面する。

主演俳優に対し、今すぐ麻薬を処分し海外へ高飛びするように迫る監督だが、その後の展開がまさかの…

ミモザ

これはとある料理研究家のお話。

自身の料理本のサイン会に、学生時代の不倫相手が突如現れます。

もう会うつもりもなかったのに、呼び出され軽い気持ちで指定のバーへ。

すると彼は仕事を辞めており、現在は夢に向かって進んでいるとのこと。

夢実現のためにお金を貸してくれと要求され、手切れ金と思い30万円を貸してしまう。

しかし思いもよらぬことに、彼はお金を返すと言い、連絡をよこしてきたが…

感想

どのお話しも妙に生々しさを感じるため、その怖さが際立っているような気がします。

しかしそれこそイヤミスの本領と言ったところ。

いつか自分の身にも起こってしまうのではないかと感じ、より一層鳥肌が立ってしまいます。

いずれの短編も非常に面白く、後味の悪さは立派なイヤミスです。

読んで後悔することはないと思いますので、ぜひご一読ください。

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この記事を書いた人

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