中山市朗『なまなりさん』を読んだ感想です。
久しぶりに純粋なホラー作品を読んだ気がします。
ホラー小説としてシンプルに怖い、といった感じでした。
感想には若干のネタバレを含んでいますが、ぜひご覧ください。
あらすじ
怪異蒐集家・中山市朗が聞き取った幻の長篇実話が新装版で登場。後日談と、書き下ろし短篇を収録。沖縄で退魔師の修行を積んだというプロデューサーの伊東礼二。彼の仕事仲間の健治が、沙代子という女性と婚約をした。しかし沙代子は、妖艶な双子姉妹による執拗ないじめにより自死へと追いやられる。彼女の死後、双子姉妹の周囲で奇妙な事件が続発するようになるが、それにとどまらず、被害はやがて双子の実家へと移っていく――。伊東氏の目の前で起こる信じがたい怪異と事実……。体験者本人によって、二日間にわたり語られた生々しい体験記。
Amazon.co.jpより引用
登場人物
- 伊東…プロデューサーで退魔師の男。今回の奇妙な体験をした男本人である。
- 健治…カメラマンをしており、伊東のことを兄貴と呼ぶほど慕っている。沙代子とは婚約していたが死別する。
- 沙代子…健治の婚約者。双子姉妹からの執拗な嫌がらせを受け、憎しみを抱いたまま自死してしまう。
- 鈴江…双子姉妹の姉。妹の香奈江とともに沙代子に嫌がらせを行っていた。ある時から周囲で奇妙な事件が起き始める。
- 香奈江…双子姉妹の妹。姉の鈴江とともに沙代子に嫌がらせを行っていた。周囲で起こる奇妙な事件にだんだんと精神異常をきたし始める。
- 姉妹の父親…鈴江と香奈江の父親。会社を経営しており、かなりの資産家である。先祖は島根に由来する武家一族。
- 姉妹の母親…鈴江と香奈江の母親。先祖は平家に連なっており、四国出身。ある時から奇妙な現象に悩まされるようになる。
- 今日子…沙代子の2番目の妹。沙代子が亡くなる前後から奇妙な症状が現れ始める。
感想
どこまでが実話なのでしょうか。
それとも、本当にすべてが実話なのでしょうか。
とても実話とは思えないような怪異な現象が本編で語られています。
健治の婚約者であった沙代子は見目麗しい双子姉妹による執拗なまでのいじめによって自死へと追いやられてしまいます。
その前後から奇妙な現象が起きるようになり、双子姉妹はどんどん追い詰められていきます。
家の中から腐臭がしたり、影のようなものが見えるようになったりその気配を感じたり。
それは双子だけにはとどまらず、新潟の実家に住む両親のもとにまで及んでいました。
母親はたびたび夜に人の気配を感じるのだそうです。
それは女の影のような相貌に見えるが、恐怖ゆえ明かりを点けることはできず、その正体ははっきりとは分からない。
あるときはその影に首を締められたりもするそうで、おちおち寝ることもできなくなっている。
奇妙な現象はどんどんエスカレートしていき、双子姉妹一家は絶望のどん底へと突き落とされていく、といったお話です。
当然怖さはあるのですが、怖さよりもこの先の展開がどのようになっていくのか、そこに得体のしれない恐怖があり、それが気になって次々とページをめくっていってしまいました。
ですので、怖さには過度な期待はせずに読むことをおすすめします。
先の展開がどうなっていくのだろう?といったことに関しては、ページをめくる手が止まらなくなるぐらいの面白さは保証します!
およそ170ページほどと、比較的短いホラー作品かと思いますので、「ちょっと適度な怖さのホラー小説読みたいんだよな~」って方にぜひオススメの1冊です!