今回は、綾辻行人『Another 2001』の紹介です。
今作は、『Another』の正統続編として、長い時間をかけて構想されてきた作品です。
舞台は前回から3年後の夜見北3年3組となり、懐かしのキャラや外伝である『Another エピソードS』の登場人物が出てくるなど、『Another』シリーズのファン垂涎の内容となっています。
今作も例に漏れず、ホラーとミステリの融合が絶妙で、どちらの愛好家も楽しめるストーリーです。
シリーズ初心者の方でも楽しめる内容にはなっていますが、できれば『Another 』→『Another エピソードS』→『Another 2001』と読み進めていってほしいです。
あらすじ
始まってしまったら……人が死ぬ。何人もの人が。
多くの犠牲者が出た1998年度の〈災厄〉から三年。――春から夜見山北中学三年三組の一員となる生徒の中には、三年前の夏、見崎鳴と出会った少年・想の姿があった。〈死者〉がクラスにまぎれこむ、という奇怪な〈現象〉に備えて、今年度は特別な〈対策〉を講じる想たち。だが、クラスに広がる不安と疑心が次第に歯車を狂わせていき……ついに惨劇の幕が開く! 名手・綾辻行人が満を持して放つ、圧巻の学園ホラー&ミステリ。
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考えて。そして、思い出して。謎を秘め、物語は美しい破局へと突き進む!
〈死者〉を“死”に還す。――三年前に同様の危機を乗り越えた経験を持つ卒業生・榊原恒一の助言を得て、想たちは事態に立ち向かおうとするが……。
考えて。そして、思い出して。
猛威をふるう〈夜見山現象〉史上最凶の〈災厄〉。――止まらない残酷な“死”の連鎖、そして深まりゆく謎。恐怖と混沌、絶望のなか、物語は凄まじくも美しい破局(カタストロフィ)へと突き進む! 著者渾身の大長編、怒濤の完結巻。
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登場人物
比良塚想
今作の主人公。3年3組なることがわかり、「いないもの」になることを名乗り出る。
外伝作品『Another エピソードS』にも登場しており、見崎鳴とは面識がある。
葉住結香
比良塚想と同じ3年3組の生徒。同級生の男子の中では美人で評判の女の子。
矢木沢暢之
比良塚想の親友。中一の時から同じクラス。想とはある共通点を抱えている。
幸田俊介
想の中一の時の同級生。生物部の仲間でもあり、生き物への愛はとてつもない。
碓氷
比良塚想が通うクリニックのドクター。想のことを気にかけてくれており、想もそれなりに信頼をおいている。小学生の娘が1人いる。
見崎鳴
前作『Another』におけるキーパーソン。現在は高校3年生であり、夜見山市内の高校に通っている。昔からの知り合いの比良塚想のよき相談役となっている。
今作のポイント
『Another』から3年後の2001年が舞台
本作『Another 2001』の舞台は、前作『Another』から3年後の2001年となっています。
前作の主要メンバーたちは当然卒業しており、今作ではどのようなキャラクターが関わってくるのか?
そこがまずワクワクするポイントではないでしょうか?
やはりここは前作の主要キャラクターたちの登場に期待したいところです。
今作でも表紙を飾っている見崎鳴ですが、今回はどのように関わってくるのでしょうか…?
彼女はすでに高校3年生のはず。そもそもまだ夜見山市内にいるのでしょうか?
衝撃の連続だった『Another』ですので、その後の話が気になっている人も多かったはず。
前作から3年もの月日が経過していますので、今作では夜見山市を取り巻く状況の変化なども楽しめるのではないでしょうか。
読者はすでに「災厄」を止める方法を知っている
僕らはすでに知っています。
この不平等な「現象」そして「災厄」への対処方法を。そう、3年3組に紛れ込んだ死者への対処方法を。
僕らはすでに問題を解決する方法を知っています。
そのため、迫りくる危機にどのように対処し、どうやってこの事態を終息させるのか?といったところにドキドキやワクワクは見出すことは難しいかもしれません。
分かっているからこそこの先の展開がどうなっていくのかという面白さがあります。
ここを理解できていないと、「どうせ前回とやることは同じでしょ?」と決めつけて物語を楽しむことはできません。
読者の状況が変化していることを念頭においてこの作品を読むと120%楽しむことができると思います。
今年紛れ込んだ「死者」はまさかの・・・
3年3組に紛れ込む「死者」とは、過去の「災厄」によって亡くなってしまった方です。
つまり、すでに死んだはずの人間が生きて物理的に見えて触れる状態でその場に存在しているのです。
シリーズ初心者の方や未読の方はここで疑問に思うかもしれません。
過去に死んだ人間が紛れ込んでいたら誰かしらがきづくのではないか?と。
そう。まさにそのとおりです。
しかし、誰も気づくことはありません。
それはなぜか?
「死者」がクラスに紛れ込んだ時点で、関係者の記憶は改変・改竄されてしまうからです。
ですので、クラスに死者が紛れ込んだとしても誰も気づくことはできない。
まるで元々いたかのように自然に溶け込んでいるのです。
今作では、例外の可能性も示唆されましたが、定かではありません。
この不可思議な現象には、この世のルールは一切通用しないのです。
さて、ここまで「死者」のルールについて簡単に説明しました。
ここまで読んでいただいた方はもうお気づきかもしれませんが、2001年の3年3組に紛れ込んだ死者も、当然過去に「災厄」に巻き込まれて亡くなった人です。
そしてそれは、『Another』シリーズのファンであれば、誰もが知っているあの人物なのです。
僕は衝撃を受けすぎて鳥肌が立ちました。
そして真っ先に浮かんだのは、ここからどのようにストーリーを展開させていくのか?といったことでした。
ホラー要素強めの作品ではありますが、ハンカチなしには読み進めることのできない作品です。
物語の結末はぜひご自身で確認してみてください。
感想
これぞ『Another』の正統続編…!といった内容です。
僕たち読者が待ち望んでいた作品クオリティが、期待以上になって手元にやってきました。
単行本の装丁ビジュアルはさすがといった美しさで、ついつい飾りたくなってしまいます。
肝心のストーリーですが、まさに夜見北の「災厄」が帰ってきたという展開が繰り広げられます。
僕はこの『Another』シリーズは、『Another』文庫版から入り、その後アニメ版を視聴しました。すっかりシリーズのファンとなった僕は、その後『Another S』も購入し、あとがきに記載されていた『Another 2001』の構想があることを知り、めちゃくちゃテンションが上ったのを今でも覚えています。待ちに待った作品ということで、かなりハードルが上がってしまったのも事実ではないでしょうか?
綾辻先生のあとがきによると、『Another 2009』なるプロットの構想もあるのだとか…!
2009ということはつまり本作『Another 2001』からは8年後が舞台となります。比良塚想君も23歳となっているということは、夜見北で教師になっていたりするのでしょうか?はたまた、26歳の榊原恒一君が教師になっている可能性もありますよね。
『Another』のキーパーソンはやはり見崎鳴になってくると思いますが、彼女は今後どのような形で現象に関わってくるのでしょうか?
そして、今作に登場した、不思議な力を持っていそうな碓氷希羽ちゃんは関わってくることがあるのでしょうか?8年後といえば彼女は14、5歳でしょうか?続編が気になるところです。