今回は、綾辻行人『Another エピソードS』を紹介します。
本作は、もう一つの『Another』として、見崎鳴が夏休みに訪れた別荘での出会いを描いた物語です。
夏休みに鳴が出会ったもう一人の「サカキ」との奇妙なお話です。
そして今作は、『Another』とその正統続編である『Another 2001』をつなぐ物語でもあります。
『Another 2001』はそれ単独で読んでも面白い作品ですが、『Another』、本作『Another エピソードS』を読むことによってより一層世界観に浸ることができます。
2つの作品の橋渡しとなる作品ですので、番外編と侮ることなかれ、シリーズファンなら見逃せない一冊になっています。
ホラーやミステリが好きな方にもオススメのシリーズとなっていますので、これらに興味がある方はぜひ本記事をチェックしてみてください!
あらすじ
〈死の色〉を視る美少女と死体を探す幽霊の、ひと夏の冒険の物語。名作学園ホラー『Another』、驚愕の続編!!
聞かせてあげようか。あなたの知らなかった、この夏のお話。
異能の美少女・見崎鳴は語りはじめる。1998年、夏休み。かつて夜見山北中学の三年三組で〈現象〉を経験した青年に会うため、〈湖畔の屋敷〉を訪れた時のことを。鳴が遭遇したのは、三ヵ月前に謎の死を遂げた青年の幽霊、だった。行方の分からない自分の死体を探す幽霊と鳴の、謎めいた冒険の結末は――!?
解説・朝霧カフカ
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登場人物
見崎鳴
今作の主人公。今年の夜見北3年3組の生徒であり、「いないもの」を務めていた。左目に「人形の目」をつけおり、普段は眼帯をしている。その左目には不思議な力があるとか…
賢木晃也
本作のキーパーソン。すでに亡くなっているようだが、幽霊となって特定の場所に出現している模様。不思議な力を持つ鳴とともに自身の死体と記憶を探している。
比良塚月穂
比良塚想と比良塚美礼の母。賢木晃也の姉でもある。どうやら賢木晃也の死に何かしらの形で関わっている模様。
比良塚想
比良塚月穂の息子。父親の違う妹がいる。叔父である賢木晃也のことを父のように慕っていた。
榊原恒一
見崎鳴と同じ夜見北3年3組の生徒であり、東京からの転校生。
読み応えポイント
前作に続き、絶妙なホラーとミステリの融合
残念ながら、前作ほどの怖さはないと思います。どちらかというと、ミステリ要素のほうが強めな印象です。
ホラーファンには少し物足りない内容となっているかもしれませんが、ミステリのちょうどいい補完になっています。
ミステリとホラーの融合はバランスが難しく、さじ加減を少し間違えるとたちまち陳腐な内容になってしまいます。
今作ではそのような心配は必要なく、ミステリの謎の不気味さを高めるための最高のエッセンスとなっています。
また、『Another』シリーズのファンにとっては、『Another』と『Another 2001』をつなぐ重要なお話となっているので、見逃すことはできません。
賢木晃也と3年3組の関係性
今作で登場している賢木晃也ですが、どうやら昔夜見北に通っていた過去があり、3年3組の生徒だったようです。
つまり、災厄の経験者だったのです。当の本人は途中で夜見山市から離れた土地に住んだため、災厄から逃れていました。
賢木晃也が生前まで住んでいた湖畔のお屋敷には、3年3組当時仲の良かったクラスメイトが夏休みの時に遊びに来たこともあったとか。
賢木晃也は3年3組の「現象」にまつわる真相を知っているのでしょうか?
『Another』本編では語られることのなかった謎が新たに示されるのでしょうか…
賢木晃也の幽霊の正体とは・・・?
賢木晃也はなぜ幽霊となってこの世に留まっているのでしょうか?
普通は死んでしまったらそのまま意識はなくなるはずです。
しかし、賢木晃也は幽霊となってこの世に存在し続けているようです。
また、生前の記憶も一部失っており、「なぜ自分が死んだのか?」「同級生の顔と名前がうまく思い出せない」などに悩まされているようです。
断片的に蘇る記憶を辿っていくことで、この奇妙な幽霊の謎を解いていくことができるようです。
感想
今作は前作とはうってかわり、驚きと恐怖に満ち溢れたストーリーではありません。
ミステリをベースとし、ホラー要素を絶妙に混ぜることで「謎」の部分に深みを持たせています。
見崎鳴が出会った賢木晃也の幽霊の正体を明らかにすることが、今回の事件を解く鍵となります。
賢木晃也はなぜ死んだのか?賢木晃也はなぜ幽霊となって時折現れるのか?賢木晃也はなぜ記憶を失っているのか?
じっくりと読み込んでいけばあなたにもきっとこの謎が解けるはずです。真相に気づいたときは、その特異性に驚くことになるかもしれません。
だらだらと長くなってしまいましたが、一言で感想を言うならば、「文句なしで面白い!」です。
単作で見ると理解や面白みに欠けるところもあるかもしれませんが、ミステリ作品としてきっと楽しめるはず。
そして言うまでもなく、『Another』シリーズのファンは必読の一冊です。
たしかに読まずとも『Another 2001』を楽しむことはできますが、おそらく面白さは半減してしまいます。なぜなら、『Another 2001』は『Another』から3年後が舞台。今作『Another エピソードS』に登場するあの人物が物語の中心となってきます。
今作で散りばめられている伏線が回収されることもあるかもしれませんので、ぜひ読んでみてください。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
今回紹介したのは、前作『Another』では語られることのなかった、見崎鳴が夏休みに体験した奇妙な出会いの物語です。続編の『Another 2001』と『Another』をつなぐ重要な作品でもありますので、『Another』シリーズのファンの方はもちろんのこと、ホラーやミステリが好きな方もぜひ読んでみてほしい一冊です。
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